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アーユルヴェーダ叢書

『アジアの伝統医学』
   
   
 
 

  
女性による口伝−ジャムゥ
  内服薬の他、マッサージ用ジャムゥなどもあり、内用、外用を合わせ、健康増進用、疲労回復用、病気の治療用、美容用、お茶の代用など、それぞれに定められた処方がある。
  これら一定の処方と調合法は、母親から子供へと世襲的に口伝で今日まで伝承されてきたのである。
  このようなジャムゥが、今まで医学大系として問題にされなかった理由は、専門医が存在しないばかりか、ジャムゥ治療の原理が不明だからである。いまだに、この根本原理の記述は見出されていない。ジャムゥが病気の治療薬でもあるにもかかわらず、現代のジャムゥ専門家は、病気の診断はせず、買手が求める処方か、買手から病状を聞くかしてジャムゥを調合する。調合販売の場所は、自宅またはパサル内に一定の場所を定め、毎日、そこに待機し、買手に求められた必要量を調合する。自分の主観から処方内容を変更したり、新しい処方を創作したりすることは絶対にしないそうである。
  一方、道で出合うジャムゥ売りのおばさんや娘さんのジャムゥは水剤で、一般性のある健康増進、疲労回復や風邪などに効用のあるジャムゥを持参している。最近は製薬会社の粉末ジャムゥを熱湯で溶き、飲む時に、ジュル・ニピス(すだちの一種)の汁を滴下して出すという簡単なものもあり、全体的に効能がうすいといわれている。それでも、実際に呼び止めて飲ませてもらうと、やはり身体の疲れが抜けた気がするから不思議である。
  このようなジャムゥの医学大系について言及するならば、一定の処方に従って調剤されている事実から考えると、自然発生的な民間薬ではなく、古来、ジャワ島に伝播または存在した伝統医学の一部が、社会の変遷とともに専門医を失い、その治療薬だけが残されたとする方が、真実に近いと考えられる。

ジャムゥは生のドリンク
  日本で一般に知られている漢方薬と最も異なるのは、ジャムゥの大部分が煎剤ではなく、加熱されない生のジュースだということである。古くから中国文化が導入されているにも関わらず、ジャムゥは生ジュースから煎剤へと変化しなかった。原料を乾燥保存しなくても常に新鮮な材料があるからかもしれない。現在では煎剤用に配合した「ジャムゥ・ゴドグ」があるが、一人分の材料が多いので大鍋が必要である。
  本来のジャムゥの調合の基本は、生薬を個別または数種類ずつ、臼(ルンバン)と杵(アル)で砕き、次に右の卓ピピサン)と石の丸棒(ガンデイ)で磨りつぶす。この場合、材料は生の根茎や実が多いので磨りつぶした混合物は一般にドロドロの泥状である。他に種子や乾燥生薬も入るので、最後にジャワ砂糖を加えてから漉し、残査は家畜(牛や豚)に与える。
  このようにドロドロのエキス状ジャムゥには水溶性成分も油性成分も全部含まれており、おなじ材料を煎じて得た煎液中の成分より多種類の成分が存在すると考えられる。
  このようなジャムゥの調合法は、早い時代には痛人が出てから調合を始め、患者の様子を思いやりながら祈る気持ちで、呪文を唱えながら一心に磨りつぶした。現在でもこの石の台と石の丸棒で丹念に磨りつぶす操作は変わっていない。念を入れて、くり返し磨りつぶすことによって細胞が壊れ、中から成分が出てくるのである。実験化学の例で述べると、細胞中のある酸素活性を測定する時に使われるホモジナイザーと同じ原理なのである。

(インドネシアのアーユルヴェーダ・ジャムウより<抜粋>)

マルマ一局所解剖学の発展
  インド外科医はマルマ(またはマルマン)の概念を導入することにより解剖学の正確な知識の不足を補ったが、このマルマは外科学の発達に必要な局所解剖学を発展させた。
  「マーンサ(筋肉)、シラー(脈管)、スナーユ(靱帯)、アスティ(骨)またはサンディ(関節)が渾然一体となったものをマルマ、すなわち体の活動部といい、それがおのずから生命(プラーナ)の座を形成する 。マルマはシャーリヤ・タントラ(外科学)の分野の半ばを占めるもので、人がマルマに傷を受けると短期間に死ぬ(損傷後、一週間以内)といわれる。マルマのどこかに傷を受けると、たとえ的確でいい治療を受けて死を免れたとしても、確実に器官の変形が起こる」。
  一〇七箇所のマルマがあり、五グループに分類されている。(1)マーンサ・マルマ(筋性部の)11、(2)シラー・マルマ(脈管の)41、(3)スナーユ・マルマ(靱帯結合の)27、(4)アスティ・マルマ (骨の接合部)8、(5)サンディ・マルマ(脆弱な関節)20。 107のマルマのうち、両下肢にそれぞれ11箇所あるので下肢に22、上肢に同数、したがって四肢合わせて44箇所のマルマが存在する。胸と腹部(ウダラ)に12、背部に14、頚部(グリーヴァ)とそれより上部に37箇所のマルマがある。

(略)

マルマの五群
  マルマは損傷の程度により5グループに分類される。(1)サディヤ・プラーナハラ、すなわち一過問以内に死ぬもの。(2)カーラーンタラ・プラーナハラ、すなわち二週間から一月以内に死ぬもの。(3)ヴィサリヤグナ、すなわち槍、その他、体内に入った異物を除去するとすぐ死ぬもの。(4)ヴァイカリャカラ、すなわち不具、または変形。(5)ルジャーカラ、すなわち痛みの激しいもの。
  スシュルタはマルマのうちで重要なものを挙げ、その切開の部位を詳しく述べている。切開はウルヴィ、クールチャ・シラー、ヴィタパ、カタシャ、パールシュヴァというマルマから一横指のところでしなければならない。それに対して、スタナムラ、マニバンダまたはグルパというマルマの部位で切開をするとすれば、そこから二横指の部位で行わねばならない。同様にフリダヤ、ヴァスティ、クールチャ、グダ、またはナービというマルマからは三横指の幅を取って行わねばならない。四つのスリンガータカ、五つのシーマンタと一〇箇所の頸のマルマからは四横指の部位、残りの五六箇所のマルマでは半横指置くのが原則である。マルマに達する切開は致命傷となるので、外科の専門家は手術を行う際、局所の各マルマの位置と拡がりをまず計算に入れ、それを損わぬように切開を行うのを旨とした。つまり手術の際はマルマのすべてを注意深く避けて行うべきである。

スシュルタによる外科手術の八方式
  このような原始的な外科手術をいろいろ観てくると、古代インド人がどのようにして効果的な方法を探し技術を発展し完成してきたか、またそれに熟練してきたかがわかる。彼らの手術の範囲は未開の民族が行ったほど広範囲のものではなかったが、その方法が非常に改良され、新しい知識と技術で補われている。奇妙なことに、管錐術に関する論文がインドの外科にはないことである。スシュルタは外科手術を次の八方式に分類している。
  (1)切除術(ベーディヤ)(2)切開術(チェーディヤ)(3)乱刺法(レーキヤ)(4)穿刺法(ヴエーディヤ)(5)探針法 (エーシュヤ)(6)摘出術(アーハリヤー)(7)排液もしくは吸引法(ヴィスラヴィヤ)(8)縫合術(シーヴィヤ)。
  前記の手術を行うためには、外科医にとって外科用品と器械、たとえば鈍器と鋭器、腐蝕剤、熟灼用具、探針、角、蛭、苦瓜、黒い石で作った栓子または消息子、木綿、布片、糸、葉、麻、蜂蜜、精製バター、脂肪、ミルク、油、皮膚軟化剤と収斂剤、軟膏、ペースト剤、扇、冷水、温水、鉄鍋を備えねばならず、またそのほかに落ち着きのある強健な補助者を必要とする。
  外科手術は、吉祥な月と星と時を定め、火の神とバラモンと医師に凝乳、米飯、飲物と宝石を捧げて拝み、贈り物と祈りを捧げたあと行う。患者は軽い食事をとる。その後、東向きに坐らせて縛る。外科医は西向きに坐り、重要な部位(マルマ)にある静脈、神経、関節、骨、動脈を損傷しないように注意する。皮毛の生えている方向に、膿が出るまで器具を挿入する。それからすばやく引き抜くようにする。大きな膿瘍の場合は、一横指または二横指の深さまで切開する。娩出困難な胎児、腹水、痔核、結石、痔痩、口腔の病気の手術を行うとき、患者は空腹の状態で手術を受ける。術後、患者は冷水を飲み痛みを和らげる。三日目に包帯を解き交換する。術後の翌日に交換してはいけない。アシュターンガ・サンダラハ、アシュターンガ・フリダヤの項によれば、術前患者には衰弱を防ぎ切開時の痛みを感じないように、欲しい食べ物や酒を飲ませるべきだとある。
  スシェルタは病気の治療を前療法(プールヴァカルマン)主療法または外科的処置(プラダーナ・カルマン)と後療法(パスチャート・カルマン)の三段階に分けている。特に強調しているの後療法である。
  手術の際にはお祓いが行われるのがならわしであった。クリチャ(女神)やラクシャの呪詛を払い、ナガ、ピシャーチャ、ガングルヴァ、祖先の霊、ヤクシャ、ラクシャサから身を守る呪文やマントラを唱えながら手術が行われた。「火の神が汝の舌を、大気の神が汝のプラーナヴァーユを、諸々の神々が諸々のヴァーユを、力の神インドラが汝の力を、マヌーが汝の頸の二つの腱を、ヴイシュヌが汝の力を、ナラヤナが汝の精力と男らしさを、ブラーマンが汝の魂を、ドゥルヴァ星が汝の眉に加護を与えたまえ。汝の体には神々が常にいますように。神々が常に汝を守り、長寿を与え給うように。月、太陽、ナラグ、アグニ、ヴァーユ、インドラとラクシャに従う諸々の神が汝に祝福を与え給うように。ブラーマンと諸々の神の祝福が得られますように。不作を起こす神々を静め、病苦から免がれますように」と唱え呪文を終える。『アタルヴァ・ヴューダ』の精霊信仰が盛んに行われた。外科医は自己の技術や技瞞に頼ろうとせず、患者の生命はすべて支配者である神々の手にゆだねられた。

(アーユルヴェーダの外科学より<抜粋>)

シッダ医学の目的
  全ての医学は病気の予防と治療を目的とするが、シッダ医学はさらに不死の身体の達成を目的とし、完全なる身体をつくること、すなわち身体成就(デーハシッディ、カーヤサーダナ、カーヤカルパ)を目的とする。この身体成就は神となるための一種の肉体的修練で、ヨーガ(瞑想)やアーサナ(座姿)の実践、エリクシル(霊薬)の摂取など、いろいろな方法で実行されていた。これは人間に霊的力をつけさせることによって人間は肉体的不死、すなわち異常な長寿を獲得し、永遠の若さと美しさを保ち、意のままにどんな姿にでも変化でき、巨大な霊的力を獲得し、不可視の存在と化し、空中を飛翔し、三界のあらゆる部分や原子を見ることができる能力がつくようにさえなれる。
  インドの救済観には、死後解脱(ヴィデーハムクティ)と生身解脱(ジーヴァンムクティ)の二つがある。前者は肉体のない、つまり死後の救済であり、後者は現世つまり生きたこの身体のままでの解脱である。そのために後者では瞑想(ヨーガ)と薬物(アウシャダ)を用いる。
  シッダ医学では不死の身体を作るために、消滅しない物質に関心があり、細胞の老化を防止する薬物を探究した。ここから滅びない物質としての金属、鉱物が探究されたが、これは金属・鉱物学の分野での先駆となった。しかもそれは、少量で、不変化で、また季節を問わずに採取できるという利点があった。
  とくに水銀と硫黄が重視され、水銀(シッダ・ラサ)はシッダ医学の基本鉱物とされている。硫黄は水銀の液体性を調節し、また水銀を硫化水銀に変える。十一世紀頃の錬金術書『ラサールナヴァカルパ』(水銀の無限の力)は、「水銀と硫黄はその用途によって神酒とも毒ともなる。定めにしたがって摂取すると、それらは神酒として作用するが、どのような定めも守らずに用いると、それらは毒として作用する」と述べている。
  神を感得する方法を示したシッダはヨーガシッダと言われ、健康な身体を維持する方法を教えたシッダはカーヤシッダとして知られている。前者は内在する神を重視し、後者は神の住処である身体を重視する。前者はヨーガの実践によって身体が不死となると考え、後者は薬物の摂取と健康な身体の維持によって、身体が不死となると考える。
  ヨーガ・シッダとカーヤシッダはそれぞれ独自のやり方で自らの修法を実践するが、それは一枚の硬貨の裏表のようなものである。前者は直接に神を感得しようとしたが、一方、後者は自分の身体を通して神を感得しようとした。
  シッダ医学はカーヤシッダが創始した医学であり、カーヤシッダは自らの身体を病気から守ることによって、至福を得んがために身体成就(カーヤシッディ)を達成し、霊魂の器としての身体を強健にすることに目的とした。身体は唯一無二の神の道具であり、身体によって人は霊的な進化を首尾よく達成できるのである。身体が強化されて初めて人は死を避けることができ、そのために彼らはいろいろな種類の薬物、鉱物、毒物の多様な特質を調べ、それらを適切に使用した。とりわけ金属を薬物として用いたことは先駆的な業績であった。

(シッダ医学概論より<抜粋>)

生命観
  モンゴル医薬学では人体は三つの体液、つまりヘイ[風素](アーユルヴェーダの「ヴァータ」、チベット医学の「ルン」に相当)、シャル[胆汁素](同じく「ピッタ」、「チィーパ」)、バダカン[粘液素](同じく「カパ」、「ベーケン」)の三つの精妙な生命維持のエネルギー(ドーシャ)から成っており、そのコントロールのもとに人体は七種の粗大な組織要素(ダートゥ)[乳び、リンパ・血液・筋組織・脂肪組織・骨組織・骨髄・精液、卵巣]から構成されている。

病理学
1疾病の原因
  疾病となる本質的な内因(個人の体質)、病変を起こす外部からの誘因、発病道(侵入路)(皮膚粘膜に拡散する、筋肉に侵入する、脈管を徘徊する、骨組織にしみ込む、五臓に病変を起こす、六腑に症状が出る、という六つの入り口・経路があるといわれている)の特定、疾病の拡散範囲、病態、疾病の年齢、地域、季節、日々と季節の過ごし方、不適切な食事、日常の行為、合併症などを含む。
2診断方法
  診断方法は視診、問診、触診で病状を診断するが、具体的には脈診、尿診、舌診、皮膚の検査、眼球、爪、身体の検査がある。
3治療方法
  食事療法、養生と看護、薬物治療、五種療法の四つの内容をふくむ。
  古典的なモンゴル医薬学の概要では、病種を通常四〇四病(『ギュー・シ』「結尾タントラ」)としていたが、詳細に検討するならば,実際には一六一六種類にも達するといわれている。しかし、それは同一の病気が何回も重複して記載されていたり、一種類の病気を幾つかの病名で呼んでいるものがあるからである。したがって、最終的にはヘイによって起こる病気が四十二種、シャルによって起こる病気が二十六種、バダガンによって起こる病気が三十三種となり、合計一〇一種類の病気が存在することになる。
  一二一二種類の病気に対する有効な治療法は一〇〇二種類も取りあげられているが、要約すれば、食事療法、養生・看護、薬物療法、五種療法の四つになるであろう。温性病(赤、腫、痛、熱などの症状が顕著で、いわゆる急性炎症や伝染病など)の場合は冷性の性質を持つ食事をとり、適切な室温の病室で看護して、寒性の性質を持つ薬物療法を実施し、瀉血などの五種療法を適用する。これを習慣的に四水療法方針という。逆に寒性病の場合であれば、前記と逆の四火療法方針をとるのが通常の治療法である。

(モンゴル医薬学序説より<抜粋>)


 
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