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アーユルヴェーダ叢書

『南インドの伝統医学―シッダ医学の世界―』

 
 シッダ医学の特徴を大雑把に理解するために、ここでその幾つかの問題を見ておこう。

 シッダ医学には次の八項目の診断・検査の方法がある。すなわち1脈診、2眼診、3声診、4触診、5色(肌色)診、6舌診、7便診、8尿診。このうち脈診と尿検査はシッダ医学の際立った特徴である。

 (A)脈診。シッダは基本的にヨーギ(行者)であり、副次的に医師である。ヨーガ=シッディは深い瞑想を必要とする。脈診は精神の集中が必要であ る。脈の速度(割合)、量、張力(圧力)の測定は今日では一般的である。シッダは脈で診断と同時に予後もする。脈を取るのに適した部位として、@頚動脈、 A上腕動脈、B橈骨動脈、C胸部すなわち心臓部、D側頭部、E上腹部、F大腿動脈、G膝窩部、H頭骨の頂上(特に幼児の場合)が挙げられている。一般に男 は右手の橈骨、女は左手の橈骨で測るのが良いとされている。

 患者の脈数は年齢によって細別されている。

 生まれたばかりの赤ん坊 … 一四〇(一分につき)

 小児 … 一〇〇

 若齢の少年 … 一二〇〜一三〇

 青年 … 九〇

 成人 … 七〇〜七五

 成人女性 … 七五〜八〇

 老人 … 七五

 坐った姿勢(男女) … 四〇

 寝床に横たわっている場合 … 六七

脈を測ってはいけない種々の条件が指摘されている。脈拍に影響するいろいろな要因として、年齢、性別、時間、曜日(惑星)、季節が挙げられている。 適切な師匠と長年の経験がないと、脈診はできないと言われている。グル=ナーディは他の全ての脈搏を完全に支配していると言われている。グル=ナーディの 座は、パンチャ=ナーディ(五脈)の中心である。次表はパンチャ=ナーディと五元素と五指の対応表である。

       五指    五脈    五大  

       親指   ブータ脈   地

       人差指  ヴァータ脈  風

       中指   ピッタ脈   火

       薬指   サラパナ脈  水

       小指   ブータ脈   空

 脈の打ち方は三つある。ヴァータ、ピッタ、カパがそれぞれ四:二:一の割合のとき、健康とする。三つの脈のうちヴァータが基本となる。シッダで は、脈をコントロールする人は死をコントロールする、という。また、ラージャヨーガで精神的、心理的コントロールをする。一分間に十五回呼吸する健康な人 の寿命は百二十歳という。

 (B)尿検査 シッダ医学の尿検査の目的は、トゥリドーシャの優勢を見つけだすことと、予後を知ることにある。その方法はとても簡単で、装置も実 験室もいらない。検査項目は、色、臭い、濃度、量、泡、表面張力(油の広がり方)の六種がある。これでドーシャ、冒された器官、病気の原因を診る。

 ○尿の色。@不透明または乳白色=ヴァータ、A薄い黄色を帯びた赤=ピッタ、B濃い黄色を帯びた赤=黄疸、C泡の多い尿=カパ、D濃い赤(ルビー のような)=危険な徴候、Eミルクのような白色の場合は悪性の徴候、F蜂蜜色=この病気はやや時間がかかるが治癒する、G麦色または黄色の場合は病気は治 癒する。

 ○胡麻油の進行による尿の検査。陶器かグラス容器に尿を入れて、容器を明るい日光の下に置き、胡麻油を一滴落とす。油滴が長く伸びる場合はヴァー タ。あらゆる方向に広がるのはピッタ。花模様に見える場合はカパ。油滴が多数の滴に分離するか、油滴が分離しない場合は、その病気は徐々に治る。油が底に 沈むならば、その病気は治りにくい。油滴がゆっくり広がれば、その病気は早くに治る。

 油滴が、身体の手足や胴体、魚、囲繞の場所にある神殿、象、丘陵、傘、髪束、ヒンドゥー寺院で用いる団扇、蓮華の花、象牙、湯飲み、鏡、巻貝、弦楽器(ヴィーナ)、四角の家、蓮華の蕾に見えるならば、その患者は治癒する。

太鼓、壷、豚、陶工の轆轤に見えるならば、その病気はゆっくり治る。

 一本足・三本足・四本足の頼りない構造、頭のない胴体、ナイフ、槍、杵、弓、鉈鎌、蛇、猫、鼠、瓢箪、虎、鳥、猿、獅子、馬、コブラ、蔓草、牛、飛鳥、亀、蠍のように見える場合、もしくは油の範囲が収縮し・泡立ち・消滅すならば、その病気は不治であるか致命的である。

 (C)薬物の使用する時刻。 シッダの医師は占星術(天文学)の知識が必要である。星宿(九曜)と薬物との一致、惑星(曜日)薬との関係(例えば、月曜、水曜は無効、火曜・木曜・日曜は良効)、日時との関係、日々の月の干満との関係が指摘されている。

 (D)薬物と薬物との相関関係。 シッダでは薬物を敵(シャトル)と友(ミトラ)に分けて認識している。

 敵(シャトル)はその性質が他の薬物と非親和性、非融和性であることを意味している。友(ミトラ)は、その薬物を他のものと混合した場合に、薬効 が共労作用によって増大することを意味している。つまりある薬種が別の薬種と親和性、融和性のあることを示している。またこの親和性と非親和性の分類法の 概念が、近代医学の概念の先駆であったことが指摘されている(本文より)。

 
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